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晴れた日にはオートバイに乗って

イレクターパイプでルーフラックを”カッコよく”作るには

序章:ルーフラックについて

ルーフラックというものがある。 車の屋根の上に取り付けて、その上に荷物を乗せるためのアレである。

The Adventure Wagon: A 2004 Volvo XC70 Overland Build | OVERLAND BOUND COMMUNITY

私が勝手に目標にしている Young Satchel 氏のXC70

なぜ屋根の上にラックを積む必要があるのか。街ゆく脳内の人々に聞いてみた。

  • 荷物を積むのに必要だからだよ(お仕事的な意味で):ラックユーザー全体の90%
  • 荷物を積むのに必要だからだよ(外遊び的な意味で):ラックユーザー全体の8%
  • え?カッコいいからだよ:残りの2%

私はどこに属するのかといえば、残りの2%だろう。

どんなルーフラックが必要か

私が必要とするのは、 「見た目がルーフラックしていて、ぶっちゃけそんなに使う機会はないんだけど、ちゃんとラックとして使おうと思えば使えないこともないくらいのもの」 である。 荷物が多そうな場面としていちばんありそうなのはキャンプに行くときだが、たぶんそのときでさえキャンプ道具をラックに積むことはしない。どうしてかというと、XC70は素の状態でも十分すぎるほど荷物が積めるから。 この要件を念頭に置いたとき、市販のルーフラックは「ガチ(値段が高い、重い)」すぎる。

ルーフラックは作れるか

何の設備も持たないサラリーマンがライトなルーフラックを作る方法として、言わずと知れた矢崎化工のイレクターパイプを使うという方法があり、ググればいくらでも事例が出てくるくらいにはメジャーらしい。 ただし、大体の場合その自作ラックからは隠しきれない「イレクターパイプで作りました」感が放たれている。 もちろん隠すつもりがないのならそれでいいのだが、個人的にはバリバリに放たれるイレクターパイプ感はあまりカッコよいものには見えないので、できるだけイレクターパイプ感を出さずにルーフラックが作れないかと考えた。

"ルーフラック イレクター"での画像検索結果の例。先駆者の皆様を批判するつもりは毛頭ありません。

イレクターパイプ感とは何か

一言でいえば「コーナーのジョイント感」に尽きる。 市販のルーフラックは金属パイプを曲げて作ってあるから、コーナーは継ぎ目なく綺麗な弧を描く。ジョイントなどない。 しかしイレクターとその周辺パーツの自由度はどうしても限られるので、無粋なジョイントをどうしても使わなければならない場面がある。 そのような制約のある中でイレクターパイプ感を抑えるにはどうすればよいのか。

解決へのアプローチ

矢崎化工のwebサイトを見ていると、パイプの曲げ加工を受け付けていることを知り、一気に解決の糸口が見えた。 要は、コーナー部分に曲げたイレクターを使えば、市販品ぽくなるのではないかということだ。

検討

そうとわかればあとはモデリングして、どのような見栄えになるのかを確かめて見る。 こういうときに役に立つのが使用歴が長い(使用頻度はスッカスカ)メタセコイア御大である。

パイプはもっとも「急に」曲げられたとして、R=150mmらしいので、モデリングもそれにあった数値で行う。 各種ジョイントパーツも矢崎化工のwebサイトの寸法を元に作成。 ラック全体の大きさは、市販品をリファレンスとして、幅1,000mm、奥行き1,200mmくらいにしている。 ラックの枠となる「環」は、曲げイレクター4つを組み合わせて構成する。

上の例では「上の環」と「下の環」を同じ大きさにしてみたが、「下の環」を前方に少しだけ突き出して見るとさらに「ぽさ」が出ると思う。具体的には、以下のように。

まだまだ調整の余地がありそうだが、ここまでやって実現可能性が見えてきたので、どのくらいの金額で実現できそうなのかを試算してみる。

実際、いくらで実現できるのか

では実際にどれだけのパーツが必要になるか数えてみよう。数えやすいようにパーツごとに色分けをしてみる。 まずはジョイントパーツ。

つぎにパイプ。

それぞれのパーツをカートに入れていく。これで、合計金額はもちろん、総質量も出るあたり矢崎化工は”理解”っている。

果たしてその結果はーーー

18,502円、10.53kg

この結果をどうとらえるか

パイプは余裕を持って少し長めにしているとはいえ、この結果は想定の”倍”だった。価格も重量も。

市販品のスチール製のラックでも重量は12, 3kgだし、価格についても安いものなら2万円台半ばで買える。

この程度の差なら、わざわざ作る時間と手間をかけてまでイレクターパイプでラックを作る理由がなくなってしまう。

ここでようやく気付く。

イレクターパイプの売りはさまざまなパーツの組み合わせにより「市販品にはないもの」を作れることであり、 「市販品ぽいもの」を作ろうというのはそれに逆行するものだったのだ、と。

例えばルーフラックを作るなら、自分の車にぴったりなサイズのラックを作ろうとか、高さのあるラックを作ろうとか、ヘンテコな形のラックを作ろうとか、そういうことをするのであればイレクターパイプは適任だ。(道交法的な制約についてはここでは触れない)

というわけで、この案はここでストップ。