「ちゃんとしたメンブレン」を探すシリーズ第5弾にして取り上げるのは、メンブレン界の最高峰 富士通リベルタッチ。
メンブレンを(メンブレンというだけで)批判するひとにとってはおそらく存在理由が理解できないであろうこのモデル。
いや、かくいう私もこのキーボードを知ったときは理解できなかった。
「この価格でメンブレン?」
でも今ならわかる。 メンブレンだからダメ、などという単純な話ではないということが。
(この件に限らないが、物事の一面、ある物事が持つ一部の属性だけに着目して「〇〇だからダメ」「〇〇だから良い」という判断を下すのは、あまりに短絡的すぎ、そのような物事の全体が見えていない状況での判断は、往々にして誤ることが多い。)
さて、前置きはこれくらいにしてさっそく使ってみる。
例によってこいつも個人売買にて入手したものだが、梱包から取り出して机の上に配置するまでのその過程でまず感じることがある。
重い。
とにかく重い。リアルフォースよりも全然重い。ズッシリとした、金属の塊を抱えているよう。(実際、2枚の鉄板が入っているとのこと)
打ってみる。
スコスコ…
スコスコスコスコ……
軽い。
軽いが、同じ富士通のFKB8420のサックサクとした軽さとはまた違い、こちらはよりタクタイル感がある。
使い始めのうち初期の初期のうちは、リアルフォースの使用感に近いと感じていたが、慣れるとそれともまた違う。
リアルフォースほどのタクタイル感はないが、リアルフォースよりも軽く、それでいてしっとりとした打ち味。打鍵音が静かなのも、その印象に拍車をかけているかもしれない。静音モデルのリアルフォースよりも静かなんじゃないか、これ。
タクタイル感あると書いたが、かなりリニアに近い特性というか、メカニカルで言うなら赤軸っぽい感じがある。タクタイル感が好きな私にとっては少し物足りない...
そして軽いせいなのか、なんとなくミスタイプが多くなる気がするのもすごく赤軸っぽい(このあたりは慣れの問題かもしれないが)
なんだろう、 「物としての出来がすごく良い」というのはわかるのだが、自分の求める打鍵感とはちょっと違う感が否めない。 こういった経験は、これまでもいろいろな場面であった。
「物としてはこちらのほうが絶対に良いのはわかるんだけど、使用感はこっちの安いほうが全然好き」みたいな。そしてそういうとき、それを認めたくないというち~っちゃなプライドもまた同時にに発生する。それを認めてしまうと、「自分は物の価値がわからない、やっすい感性の人間なんだな」ということを認めることになってしまいそうだから。
ただ、だから言って「物としての出来の良さ(≒世間的な評価の高さ≒価格の高さ)」を判断基準にして、自分の本来の好みに背を向けて、「自分は物の価値がわかる人間だ!」と自分を偽るのもなんだかおかしい気もする。
長々書いてきたが、素直に言おう、私はKU-3920のほうが好きだ。
第1回に書いたとおり、KU-3920との出会いが「ちゃんとしたメンブレンを探す」シリーズのきっかけだったのだが、どうやら「最初から一番好みの物に出会っていた」という、ただそれだけだったことが明らかになってしまった。
いや、私としては、このリベルタッチを手に入れたらこの「ちゃんとしたメンブレンを探す」シリーズは終了するつもりでいた。それは、「やっぱりメンブレンの最高峰はリベルタッチだよね」という結論に至ることを想定して。だからこそ、始めからリベルタッチに行かず、いろいろと寄り道をしていたりもしたのだが。
一応、リベルタッチを手に入れたことでこのシリーズは終了できそうだ。ただ、結論が当初想定と異なったものになってはしまったが。